ヨーロッパ鉄道旅行 11

欧州鉄道旅行 ユーロスターに乗って

ユーロスターに乗って

欧州鉄道旅行 ユーロスターに乗って

ぜひぜひ乗りたい
  ユーロスターが走り始めて約一年、乗りに行こうと思ってもなかなか休みが取れず、ようやく実現できたのが11月下旬の約2週間。ユーロスターとフランス旧幹線それにロンドン市内の鉄道をまとめて回ってきました。  今回、出発前に手配したのは往復の航空券(全日空で往復92,000円)とパリ滞在3日間のホテルだけ。最近ではユーロスターやヨーロッパの鉄道の指定券や寝台券などが日本国内で購入できるようになりましたが、現地での日程が未定であったことと、鉄道関係のストライキが散発的に行われていて、日本で買って行ってストに当たった場合、チケットの変更など面倒なので現地で購入することにしました。

ユーロスターのチケットが
 11月17日昼、成田空港を飛び立った全日空NH205便は、同日16時40分にパリ・シャルル・ド・ゴール空港へほぼ定刻に到着。翌日、さっそくユーロスターのチケット購入のためフランス側出発駅であるパリ北駅(Paris-Nord)へ行ってびっくり。駅構内いたるところに自動小銃を下げた兵隊が立っているではありませんか。銃口は下に向けているものの、引き金にはしっかりと指が掛かっています。核実験や地下鉄爆破テロなど「安全なフランス」も環境は悪化の一歩。かなりピリピリとしています。

 さて、窓口で予定の11月24日の「9019列車」予約を申し込んだところ「この日は運転しない」とのこと。時刻表には「毎日」と表示してあり、再度確認すると「この日は他の列車も運転しない」との答え。行程を再検討し23日にしたところ即座に「OK」。パリ~ロンドン間1等車で 860FF(約17,500円)、支払はカードでしましたがフランス人はサインの確認など全くしませんね。実はフランスでは11月24日から全土で大規模なストがあり、ユーロスターを含め多くの列車が運休になり、郵便・電話や国営航空会社等も巻き込み長いところでは約2カ月間続きました。そうゆう訳で24日のチケットは売ってくれなかったのでした。

乗車日乗車区間種別
95年11月23日Pasis Nord ~ London Waterloo9019

ユーロスターが出来るまで
  ドーバー海峡のトンネル構想は18世紀の半ばに仏国王ルイ15世に、海底横断トンネル建設が提案されたと言われており、1802年には仏鉱山技師マチューがナポレオン1世に、かなり具体的な海底トンネル建設が提案されていて、その計画図には、排気口が煙突のように海面に突き出ており、トンネルの中を馬車が走っている様子が描かれています。1876年にはトンネル計画は英仏の公式議案となり、1881年には英国の鉄道事業家サー・ウイリアム・ワトキンが、ドーバー近くで作業を始めましたが、英国側の「国家防衛の致命的な弱点になる」との反対運動から、英仏の両側からお互いに約2㎞掘ったところで中止になってしまいました。

 1955年になって英国は「安全保障に問題はない」との結論に達して、海底トンネル建設に関して1973年に英仏の合意が成され、1981年の調査合意、1986年の事業認可条約に調印を経て、1987年12月に英仏合弁のユーロトンネル社がトンネル工事に着手しました。そして、1994年5月6日念願の開通式がエリザベス女王、ミッテラン仏大統領の臨席のもとに行われ、11月14日に「ユーロスター」が営業開始し、12月22日からは車両専用列車「ル・シャトル」が運行を開始、 240年間の悲願が達成されたことになりました。

 ユーロスターの編成は1等車6両、2等車10両、バー車2両の18両の客車を2両のELが挟む20両編成で、9号車と10号車を境とし2組の車両を背中合わせに連結した格好です。喫煙車は1等車、2等車それぞれ2両で禁煙化が進んでいます。バー車も禁煙で「コーヒーを飲みながら一服」という愛煙家の方には寂しいところでしょうか。

ユーロスター編成表
←PARIS   LONDON→

号車181716151413121110090807060504030201
車種ELM2T2T2T2T2TBT1T1T1T1T1T1TBT2T2T2T2M2EL
喫煙××××××××××××××××××
[EL:電気機関車 M2:電動台車付き2等車 T1:1等車 T2:2等車 TB:バー車]

  車両サイズは車両長が電気機関車 22150mm、電動台車を持つ1号車と18号車 21850mm、2~17号車が 18700mmで、幅2810mmと高さ3410mmは各車共通です。幅がTGVに比べて少し狭くなっていますが、これは英国側の車両限界のための制約です。

いよいよトンネルへ
  ユーロスターのホームは北駅の左側3線を改装し専用ホームとし、さらに中2階部分にカウンターや待合室などが新設されています。中2階に上がると、ユーロスターやTGV北線、在来線の車両が見渡せますが、ユーロスターのホームだけはガラスで仕切がしてあり、自由に出入り出来ないようになっています。

ユーロスターのチェックインつまり改札は出発の20分前からで、航空機に比べ待ち時間が少なくて済むようになっていて、早く着いた乗客は専用の待合室に入れます。待合室は個人客とグループ客用に別れていて、個人客用はさらに1等と2等とに別れています。1等客待合室はビール、コーヒーなどが自由に飲めるほか、クッキーなどのサービスもあります。発車時間が近づくと担当の女性に案内され、簡単なX線荷物検査を通りホームに降り、指定された車両へ向かいます。

 1等車は3列座席で私の47番は窓側ではありませんでしたが、発車後空いていた1人席に移りました。さっそく車内探検に出かけようと思いましたが、すぐにおしぼりが配られ始め、さらに飲物のサービスが始まってしまいました。この日も朝からビールの飲み過ぎで、ジュースか何かにしようと思いましたが、思わず「ビール」と言ってしまいました。続いて食事のサービスですが、この列車は朝食と昼食の中間に走るためサラダ、サンドイッチとデザート程度の軽い食事で、夕食時のコースサービスに比べるとちょっと損したような気がします。車内アナウンスは英語とフランス語で行われていますが、ロンドン~ブリュッセル線ではこれにベルギーの公用語の一つであるフラマン語(オランダ語)のアナウンスが加わるそうです。

 食事が終わると、英国側の入国カードが配られ、海峡トンネルの突入のころ英国の入国審査官によるパスポートチェックがあり、簡単な質問(国籍、旅行目的、滞在日数、個人かグループか)のあと「CHANNEL TUNNEL」の入国スタンプがパスポートに押されました。手荷物チェックはありませんでしたが、状況(テロ予告など)によっては厳しいチェックがあると言うことです。

 食後のコーヒーが下げられた後、車内見物に出かけ11号車から先頭車18号車に向かいました。1等車は禁煙席がほぼ満席、喫煙席は50%位、2等車は80%前後で編成としては結構な乗車率ではないかと思います。13号車のバー車には4~5名の乗客がいましたが、食事時間でないせいかすいているようでした。

 席に戻ると列車はトンネルを抜け英国に入っていました。ここからは機関車もパンタグラフをたたみ、第3軌条から 750Vの電気を頂戴して走ることになります。パンフレットには英国内の最高速度は 140km/hと記載されていますが、せいぜい7~80km/h程度の運転で、フランス内の 300km/hに比べると格段の差を感じます。英国内はようやく高速新線の工事が始まったばかりで、現在は在来線を走っているためスピードが極端に抑えられています。その証に、英国国鉄の一般車と何度かすれ違っています。

 車窓が田園風景から町並みへと変わり、スピードが一段と遅くなると終着駅ウオーターロー駅が近いようです。市内に入りノロノロ運転になり、到着遅延かなと思っているとこれが定時着。ロンドン側でずいぶんとロスの多いダイヤになっています。終着駅ウオーターローはガラス張りの新しい駅で、パリ北駅とはまた違った趣の造りが特徴です。

 今後の計画では、1996年にベルギーに高速新線が完成し、ロンドン~ブリュッセル間が2時間40分に短縮され、英国内の新線開通が予定される2002年以降には、ロンドン~パリ間も2時間30分程度に短縮される見込みです。また、ロンドン~ドイツ・オランダなどの「ナイト・トレイン」やロンドン以外の地方とのアクセスなどの計画もありますが、航空機網の発達した英国内では「4時間以上は航空機を利用」というアンケートもあり鉄道ファンとしては今後の展開が気になるところです。

ロンドンの地下鉄
  ロンドンの地下鉄は「Undeground」と呼ばれ、俗に「Tube」(チューブ)とも呼ばれ名物2階建てバスとともにロンドン市交通局が運営しています。街中を歩いていると「Subway」と言う表示を見かけますが、これは単なる地下通路で、地下鉄に乗ることは出来ません。

 料金体系は完全な「ゾーン制」で、市の中心部の1ゾーンからドーナツ状に広がり6ゾーンまであります。運賃は1ゾーン£1(約 170円)から6ゾーン£2.30(約 390円)で地下鉄にしてはちょっと高いかな、という気がしますが、6ゾーンにはヒースロー国際空港があり、空港から市内中心部まで 400円足らずで行けることを考えるとそんなに高くないかも知れません。

 ロンドン観光には便利なカード「Travelcard」があります。これは平日は朝 9:30から、土・日・祝は一日中フルに使え地下鉄とバスに乗り放題で、1~2ゾーンが£2.80(約 450円)と格安になっています。3回地下鉄に乗れば元が取れるし、赤い2階建てバスにももれるので滞在中重宝しました。平日が 9:30からというのはラッシュには使わせないと言うことで、ラッシュがかなりのものだということを現しています。街の中心を貫くピカデリー線やセントラル線などの車両は地下鉄銀座線ほどの長さで、幅がより狭くなっていて、ドア間(6人が座れるロングシートがある)に立つことが出来ず、ドア付近に乗客が集まってしまっています。また、ピカデリー線はヒースロー空港に直結しているため大きな荷物を転がした客も混じり、混雑に拍車を掛けています。

 地下鉄にはサークル線(環状線)もあり、こちらは片開き4ツ扉車(京浜急行の 700形みたい)が走っていて混雑度は低いのですが、途中ディレクトリ線との平面クロスがあり信号待ちのため止まったり動いたりと結構のんびりとした路線です。最近、東京の通勤電車で車両の隅の座席をクロスシートにする会社がありますが、ここの車両は中央部分にポツンと2組だけクロスシートがあり妙な雰囲気です。

欧州鉄道旅行  88年に起きたビクトリア駅の大火災以来、地下鉄構内は全面的に禁煙になり火災の原因となった木製エスカレーターも金属製のものに取り替えられていますが、パディントン駅など一部には通路に木の板を使っているなどまだ手の回っていないところがあります。

 =写真= アールズ・コート駅

模型が欲しい
  ユーロスターに乗りに行ったのだから何としてもユーロスターの模型が欲しい。Nならカトーから発売されていますが、HOでは今のところフランスの「JOUEF」からしか発売されていません。フランスの製品だからフランス国内の模型屋を当たれば手にはいるのではないかと思い、何件か回りましたがみな「epuise」売り切れでした。ところが、英国に入りロンドン市内の自称「世界最大のおもちゃ屋 Hamley's(ハムレーズ)」の模型売り場に行ったところ、HOのユーロスターを発見しました。しかし、線路とパワーパックがセットになった昔のカツミのED58の「スターター・セット」みたいなやつで、箱も大きく持って帰れそうにありません。ホテルに戻り電話帳をめくると市内に数件の模型店が掲載されていて、そのうち観光のついでに寄れそうな2件をピック・アップしておきました。

 翌日、大英博物館の帰りにピックアップしておいた近くの「Beatties(ビーティーズ)」に寄ったところ、車両だけのセットを発見しました。メーカーは「HORNBY-RAILWAYS」となっていて、隣に陳列されているHSTの模型と同じ英国のメーカーの製品です。
 以前、英国在住経験のある友人から「英国の模型は出来が良くない」と聞いていたのでちょっと考えましたが、良く見るとHSTに比べ形態も塗装も良く、値段も£69.99(約12,000円)と手ごろなため買うことにしました。ここは店員の対応も良く、「ユーロスターが欲しい」と言うと、車両のほか線路やパックが必要なことや、モーター車が1両でほか3両はトレーラーであること、パンタグラフからは集電出来ないなど丁寧に説明されました。

ホテルに戻りさっそく中を開けると、この模型がユーロスター開業の記念としてフランスの鉄道模型メーカー「JOUEF」によって製作された2500セットのうちの1個であることがわかりました。改めて見るとさすがに良い出来で、もう1セット買いたい気にも成りましたが、旅行カバンの状況を見るとこの1セットが限界のようなのでやめとくことにしました。機関車には「JOUEF」の文字も見えますが、トレーラーには「MADE IN SLOVENIA」と刻印してあり、この模型がフランス国内生産ではなくスロベニア(もとユーゴスラビア構成国)生産であることが判ります。

 HORNBY-RAILWAYS社のHOゲージは、HSTの機関車(動力付)が£60前後(約10,500円)、同客車が£15前後(約 2,650円)で売られていて、線路、パックとのセットものも見かけました。レールバスの様な小型車もありましたが、車両自体はあまり種類が多くなく、どちらかと言うとシーナリー用品が充実しており、ハムレーズもビーティーズも車両よりシーナリーの方が場所を取っていました。外国製の模型は「FLEISCHMANN」の製品が流通している程度で、日本製を含む他社のものはほとんど見かけませんでした。電話帳を見る限り、ロンドン市内に鉄道模型専門店は見あたらず、Beattiesにしても鉄道模型のほか、ゲーム・パソコンやぬいぐるみ、プラモデル(タミヤ、レベル)などを販売するいわゆる「玩具店」という感じです。そう言えばホテルで調べた職業別電話帳(イエロー・ページ)の項目も「Toys and Models」 になっていました。Beattiesは英国全土に60店ほど展開するチェーン店で、他の店舗では何か別の物が発見できるのではないでしょうか。ハームレーズの方はさすが「おもちゃの殿堂」という感じで、「きかんしゃトーマス」をはじめとし模型以外の品揃えも良く、特にゲームの豊富さにはびっくりしました。

 車両のみのユーロスターはあと3セットほどでしたが、セットものの方はまだ積んであったように思います。当社のユーロスターも4両では寂しく中間車が欲しいところですが発売されていません。連結構造が同じで形も似ているTGV-Aの中間車を買ってきて、塗り直そうかとも考えています。

欧州鉄道旅行
市内中心部で演奏する救世軍音楽隊

旅行期間 1995年

本HP上のデータは、1995年のものです。

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