ヨーロッパ鉄道旅行 8

スイス鉄道 景勝線

スイス鉄道旅行

景 勝 線

スイス鉄道 景勝線


スイスの地形は
  スイスは地形的に北が低く、南が高くなっています。ドイツやフランスに接する北部は比較的なだらかな地形で、山岳景勝路線もほとんどありませんが、中部からイタリア国境の南部にかけて4000m級の山々が連なる急峻な地形になり景勝線が集まっています。氷河急行やベルニナ線に代表される観光鉄道に加え、ゴルナーグラード鉄道(GGB)ブリエンツ・ロートホルン鉄道(BRB)など登山鉄道もこの地域にあり、ほとんどが私鉄です。スイス国鉄線にも景勝線はありますが、有名なのはブリューニク線ぐらいで他の線はあまり知られていないようです。氷河急行など有名私鉄路線は別に譲り、今回は国鉄景勝線を紹介します。

ゴットハルト・トンネルって
  スイスとイタリアを結ぶ鉄道線は3本あり、2本が国鉄線でもう1本がおなじみレーティッシュ鉄道(RhB)ベルニナ線です。国鉄線はいずれも超大トンネル(シンプロン・トンネルとゴットハルト・トンネル)で一気に抜けてしまいますが、ベルニナ線は勾配をラックを使わず、ループ線やヘヤピン線で峠を越えて行きます。また、ベルニナ線は軌間1000mmで終着駅ティラノ(Tirano)がイタリア国内になるため「ナローの国際鉄道」とも呼ばれています。

 さて、ゴットハルト・トンネル付近の地図を見ると、トンネルのほかにいくつかのループ線が見えます。その数もトンネルの北側に1ヶ所、南側に4ヶ所の5ヶ所確認でき、さらに、北側のループ付近にはヘヤピン・カーブ線が見えます。この路線はトーマス・クック時刻表の「お勧め景勝線」にも載っていて、面白そうな線なので、乗ってみることにしました。

 ゴットハルト・トンネルは、スイスの主要都市チューリッヒやルツェルンとイタリアのミラノ、フローレンスなどを結ぶ主要幹線上にあり、数本のEC のほかに急行(IC)と普通列車が1時間に1本づつ設定されています。車窓を楽しむなら普通列車に乗った方が良かったのですが、普通列車は編成が短く私がホームに行ったときにはすでに満席になっていたので、次の急行を待つことにしました。そして数分後に入線してきた急行 ミラノ・セントラル駅行きは何と1両に6~7人程度でガラガラでした。この急行はルツェルンを発車し、チューリッヒからの合流駅アルト・ゴウダウ駅(Arth-Goldau)を出るとウイリアム・テルのアルトドルフ駅(Altdorf)や氷河急行が走るFOのアンデルマット駅への連絡駅であるゲーシュネン駅(Goschenen)を通過し、ゴッドハルト・トンネルを抜けたベリンツォーナ駅まで2時間ほど停車をしません。

スイス鉄道 景勝線
ゴットハルト・トンネルを抜け、ゲーシュネン駅に入る急行列車

ループの連続で目がまわる
  列車はルツェルン駅を出ると街の外周を長いトンネルで抜け、フィーアヴァルトシュテッテ湖畔に出ます。湖畔を走っていると車窓右手に鉄道車両が見えるところがありますが、ここはスイス交通博物館(後述参照)で、本線から博物館構内に線路が分かれているのを見ることが出来ます。その後は、しばらく湖越しに登山鉄道で有名なリギ山(Rigi)を見ながら進みます。リギ山麓のキュスナハト(kussnacht)に近づくと湖岸を離れ山の中に入り、アルト・ゴウダウ駅でチューリッヒ駅からの線を併せ停車、発車後しばらく走りブルンネン(Brunnnen)付近で再び湖岸に出ます。ブルンネンの対岸には標高2928mの岩山ウリ・ロトストック山が迫り、この付近もなかなかの車窓風景です。

 湖が終わりアルトドルフを過ぎると周囲はアルプスの谷間になり勾配も段々ときつくなっています。谷が狭くなり高速道路が鉄道に沿うようになると正面上方にループ・トンネルの出口が見えて、まもなく最初のループ・トンネルには入ります。列車はトンネルの中で大きく右回転し先ほど見えた出口を出ると高速道路が下に見え、かなり高度を稼いだ感があります。続いてヨーロッパでは有名なヴァッセン(Wassen)のヘアピン線は半円ターンを2回繰り返し高度を増しますが、ヘアピンの途中にヴァッセンの街があり白い教会が右に左に変わり、乗っている私も両側の窓を行ったり来たり。これも空いている列車だからこそ出来るワザで、混んでいる列車では待ての犬の様に静かに座っていなければ成りません。

 ゲーシュネン駅は氷河急行の走るFO(フルカ・オーバーアルプ鉄道)のアンデルマット(Andermatt)駅を結ぶラック式支線の乗り換え駅となっていて、ゴットハルト・トンネル(全長15、003m)の入口でもあります。駅からわずか 100mのところに入口があり、ラック式車両を探している間にトンネルに入ってしまいました。もう1本の国鉄トンネル、シンプロン・トンネルはトンネル内がイタリアとの国境になっていて、スイスパスではトンネルを抜けたドモドソーラ(Domodosola)駅までしか乗ることが出来ませんが、こちらはトンネルの南80kmのキアッソ(Chiasso)駅までスイス領なのでトンネルを出てもスイスパスは使えます。トンネルの中間付近で列車は力行から惰行になり、しばらくしてトンネルを抜けました。
 トンネルを出てしばらくすると連続ループ・トンネルが2ヶ所あります。最初のトンネルの手前で下の方にこれから走る2つ目のループ・トンネルの入り口が見え、すぐに列車は最初のループ・トンネルに入りました。左カーブを一まわりしてトンネルを出て振り返ると山の上の方に先ほど通ってきた線路の架線柱がチラッと見えましたが、鉄橋で谷をわたり次のループ・トンネル入ってしまい下の出口や線路は見えませんでした。今度のループは右回りで一回転しトンネルを出て後方を見ましたが、上のトンネル出口や鉄橋は確認できませんでした。このループはトンネルの区間が長く、また谷が深いため、上越線の湯桧曽ループのような開けた景色は望めません。

 さらに10kmほど下がったところに3つ目のループがあり、左カーブのループが2つ続きます。いずれも大きなカーブで列車はスピードを緩めず快調に下って行きます。ここは前のループより谷が開けているためかトンネル部分も短く、ループの途中から下にこれから走る線路が延びているのが見えました。

 谷が開けたところで列車は最初の停車駅ベリンツォーナ(Bellinzonna)駅に到着。ここで編成13両の後ろ半分を切り放し、ルガノ(Lugano)、ミラノ(Milano)へは前の7両だけになりました。ベリンツォーナ~ルガノ間には小さな峠があり、山肌に沿って勾配を登り、トンネルを抜けしばらく走るとルガノ湖畔に開けたルガノに到着です。ルガノ駅は高台にあり列車から湖は見えませが、短い市内ケーブルカーで湖畔まではすぐです。今日は南欧ムード漂うルガノに泊まることにし、ルガノ駅で列車を見送りました。

乗車区間列車種別
ルツェルン(8:19発)~ルガノ(10:59着)IC251
ルガノ(11:57発)~ベリンツォーナ(12:24着)IC388
ベリンツォーナ(12:37発)~ロカルノ(12:56着)普通
ロカルノ(14:03発)~ベリンツォーナ(14:21着)普通
ベリンツォーナ(15:35発)~ルガノ(16:06着)EC5

ルツェルンは交通博物館のホームラン王!!
スイス鉄道 景勝線  ルツェルン市内からトロリーバスで7~8分のところに、「スイス交通博物館」があります。この博物館には、60両の鉄道車両や30台の自動車、34機の航空機などの実物が展示されているほか、船舶、ロープウエイから宇宙まで交通に関するものが全て展示されています。一部の航空機のほかはすべて屋内もしくは屋外でも屋根付きの展示となっています。
  その中の鉄道部門の展示室でゴットハルト・トンネルと峠を模したパノラマ・レイアウトを発見しました。 レイアウトは10m×5mサイズで部屋の中央に設置されており、どの方向からも見えるようになっています。レイアウトは中央の仕切を境に、駅およびヤード部分(列車の留置線)とゴットハルト峠北側の山岳風景部分とに分かれます。 スイス鉄道 景勝線
スイス鉄道 景勝線  駅ヤード(写真上)を発車した列車は、本線に入りカーブを経て裏側の山岳部分に回ります。山岳部分(写真左)はレイアウトの幅一杯にヴァッセンの3つ折れヘアピンカーブが展開し、カーブを繰り返しながら徐々に高度を増して行きます。
 ヘアピンの途中にはヴァッセンの街を模したストラクチャー(家の模型など)がいくつか置かれていて、最終的に列車は80cm位まで上がりトンネルに入ります。このトンネルがゴットハルト・トンネルと言うわけですが、模型はトンネルの中でスパイラルを4~5回繰り返し、元の駅へと戻ります。

スイス交通博物館へは、ルツェルン駅からトロリーバスで約10分です

旅行期間 1995年9月

本HP上のデータは、1995年のものです。

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