ヨーロッパ鉄道旅行 5 TGV Nord-Europe

TGV

Nord-Europe

TGV Nord-Europe

北ヨーロッパ線は
 なかなか開通しない英仏海峡トンネル(ドーバー・トンネル)にしびれを切らしたのか、SNCF(フランス国鉄)は3番目のTGV路線「TGV Nord-Europe」(北ヨーロッパ線)を部分開通という形で開通させました。

 今回開通したTGV-NE線はパリから北に向かいフランス北部の都市「リール(Lille)」の手前で在来線に降り、北部の各都市を結んでいます。パリ~リール間は約260kmあり、在来線では2時間前後かかっていましたが、TGVの開通でジャスト1時間に短縮され、列車本数も毎時1~2本にふえ大変便利になっています。さらに、リールで在来線に乗り換えベルギーのゲントやブルージュにブリュッセル経由より速く行けるようになりました。リールには無人運転「VAL」やベルギー国境の街を結ぶトラムがあり鉄道ファンとしてはちょっと気になる街ですので、パリより日帰りで行ってきました。

 NE線の起点はパリ北駅(Paris Nord)で、従来のTGVの起点とは異なります。パリには長距離列車の起点が6駅ありますが、東京の山手線や中央線のような連絡線がなく、メトロを乗り継いで行かなければならないため、時間と手間がかかります。北駅はベルギー、オランダ、ドイツ(ケルンなど)方面の在来線が起点としていて、そのホームの一部を改造してTGV用のホームとしています。

 NE線の車両は2電源方式(交流25000V 50Hz/直流1500V)ですが、ドーバー・トンネル開通後は、在来線の国際特急もリール回りのTGVに変更され、これに3電源方式(交流25000V 50Hz/直流1500V/直流3000V) のTGV車両を40編成新造し充当するそうです。そうなると、北駅から昼間の客車特急列車が消えてしまうことになるかも・・・。
 今年9月開業予定のドーバー・トンネル線のユーロ・スターも北駅を起点として、アラス、リールを通り港町カレーからトンネルには入り英国に向かいます。

 TGV-NE線の車両ですが、デザイン的には従来のTGV車両と変わらず、ボディーカラーもアトランティック(大西洋線)と同じメタリック・シルバーを引き継いでいます。座席配置はほかのTGV車両と同じ集団見合い式です。但し、編成両数がA線の12両からTGV南東線と同じ10両へと減り、また、乗客数が少ないのかユニット併結はせず単独で走っています。

NE線に乗る
  NE線はパリ北駅を出ると左手にTGVの並ぶ車庫を見ながら専用線に入ります。まもなく高速運転に入りますが線路際に防音壁や家がないためかあまりスピード感はありません。途中からは右手に高速道路が平行し走っている車を抜いて行きますが、あちらも140~150km位出しているのだろうから、こちらはかなりのスピードを出しているようです。

 ところが、北駅を出て20分くらい走ったところでブレーキがかかり 40km/hのスピードになりました。どうやら12月21日の脱線事故の後遺症で路盤の補強工事をしているようです。車内放送で徐行の理由を説明しているようですが、私のは「リール駅で列車が待っている」ぐらいしかわかりませんでした。

 徐行区間にはバラスト積載車や線路運搬車などがいて復旧工事が進んでいるようでしたが、座席が反対側だったためどのような工事をやっているのかはわかりませんでした。列車は15分くらい徐行しその後ダッシュをかけ、結局20分遅れてリールにつきました。この列車はカレー行きで、カレーでドーバー海峡のフェリーに接続することになっていましたがふどうなったでしょうか。 でも、リールでほとんどの乗客が降りてしまい、ドーバー~ロンドン接続列車としては物足りない気がします。

 その後の新聞報道によると、新設したTGV線の盛り土の下に第一次大戦時の塹壕があり、そこに雨水とともに土砂が流れ込み地盤が緩み脱線したと言うことで、高速運転が出来るまでに3~4ケ月かかるとのことでした。

乗車区間列車種別
パ リ(9:14発)~リール(10:16着)TGV 7227
リール(13:31発)~パ リ(14:33着)TGV 7242
 到着時間はダイヤ上の時間です

リールのVAL
  リールはフランス第三の都市で市内には「VAL」と呼ばれる無人の新交通システムがあります。日本では郊外の比較的乗降客の少ないところに新交通システムがありますが、ここリールでは街の中心部を走っています。地方都市は言え3本指にはいる人口があるのですが、どれくらいの利用客があるのか不思議でした。

 私は国鉄駅(la gare SNCF)から1号線に乗り Porte des postes 駅で2号線に乗り換え国鉄駅に戻る環状ルートで乗ってみました。VALの入り口には「メトロ(地下鉄)」と表示されていますが地下を走るのは国鉄駅周辺だけで、国鉄駅より3駅程度走ると地上に出て高架になります。確かに国鉄駅の地下に造られた駅を見ると地下鉄と呼べるのですが・・・。ホームには営団地下鉄 南北線のようなホームドアがあり、列車が到着したときだけホームのドアが開くのでホームからの列車写真は撮れません。ホームドアのガラス越しにカメラを向けてみましたが、まともに掃除をしていないらしく汚れだらけでやめました。

 車両は近鉄のナロー・ゲージ線の大きさで(幅はもっと狭い)、車内はロングシートになっています。このロング・シートに座り足を延ばすと前のシートにケリが入るくらい狭いので、座っている乗客の前に立つことは出来ないのではないでしょうか。ラッシュ時に乗っていないので混雑状況は分かりませんが、そんなに混まないのかも知れません。無人のため編成の前後に運転台はなく、座席になっているのでかぶりつきができます。私が乗ったのが休日の昼間だったためか両線とも2両編成の列車が5~7分間隔で運行されていたにもかかわらず、乗客は一両に10人程度でした。駅間距離は500m程度で最高速度も50km/hが限度のようです。

種 類金 額種 類金 額
乗車券7.3FFカルネ56.5FF
一週間券65.0FF1カ月券250.0FF
VALの料金

  普通運賃は均一で7.30FF(約150円)とやや高く、切符は自動券売機か窓口で購入できます。入り口には改札機はなく、SNCFのホームにある日付刻印機(Composteur)と同じものがあり、ガチャンと刻印をしてから乗ります。ですから、ホームはもちろん車両にも出入り自由で、見つからない限り「タダ乗り」も出来るわけですが、見つかれば高額の罰金を請求されます。

旅行期間 1993年12月30日

本HP上のデータは、1993年のものです。

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