ヨーロッパ鉄道旅行 3 TGVでスイスとナント

TGVでスイスとナント

TGVで

スイスとナント

TGVでスイスとナント

フランスの超特急TGVで、フランスからスイスとフランス西部の街ナントを回りました。


TGVって
  フランスの高速列車「TGV」はパリを起点にフランス南部や隣国スイスを結ぶ「TGV-SE(南東線)」とフランス西部を結ぶ「TGV-A(アトランティック線)」があります。TGVの特徴は専用線を高速で走ることはもちろん、専用線から直接在来線に入り地方都市へ乗り換えずに行かれることも上げられます。

 東北新幹線も福島から山形へ、また、盛岡から秋田へと在来線に乗り入れていますが、日本の場合は新幹線と在来線とで線路の幅が異なるため、在来線への乗り入れには、「線路の幅を広くする」という工事が必要となり、簡単には在来線への乗り入れは出来ません。しかしながら、フランスを含む欧州各国では、線路が標準的な幅で敷設されているため(スペイン、ロシアなど異なる国も有ります)、信号機器などの小規模な工事で乗り入れることが出来ます。

 SE線はパリのパリ・リヨン駅からフランス東部のリヨンまで約450kmの区間専用線を走りここから在来線に乗り入れ南フランスのニースマルセイユ、東部のグルノーブルへ直通します。また、専用線を途中で降り、スイスのジュネーブ、ローザンヌ、ベルンへ向かう列車もあります。
 一方A線はパリモンパルナス駅から西へ向かい、ツールおよびル・マン(途中で分岐します)までの約200kmが専用線で、フランス西端のブレストやワインの産地ボルドーを通り遠くスペイン国境のイールンまで延々と在来線を走る列車もあります。これもフランス国内や近隣諸国のほとんどが標準ゲージだからこそ出来るワザで、最近では利用度の高いニースやブレストまでの夜行TGVもあります。
 今回はSE線でスイスのローザンヌとジュネーブをA線でナントをそれぞれ日帰りしました。

SE線でスイスへ
  TGV-SE線はフランス国内各地のほか隣国スイスへも足を伸ばしていて、ジュネーブへ6往復、ローザンヌへ4往復、ベルンへ1往復運転されています。これらのTGV国際列車に効率よく乗れるように1日で回る計画を立てました。

 TGVは全車座席指定で、特にパリ~スイス間のTGVは人気があり当日では指定券が買えないとの話を聞き、乗車前日パリ市内観光の途中TGV-SE線の起点パリ・リヨン駅へ足を運び指定券を購入しておきました。ユーレイルパスを持っていれば指定料金の16FF(約400円)だけで済みます(フランス国内のみフリーの「フランス・バカンス・パス」も同様)。指定の際、禁煙席を頼みましたがすでに満席で喫煙席の11号車になりさすが人気が高いようです。TGV指定券は「指定券自動発行機」で買えますがパス類併用の場合は窓口での購入になります。ただし、前売り窓口は空いているのに当日券売り場は長蛇の列でTGVのチケットは早めの購入がよいようです。

 TGV-SEは両端動力車と8両の連接客車の10両が1ユニットになっていて、通常2ユニット連結でパリを出発し途中駅で分割します。私の乗ったローザンヌ行き「EC21」列車も途中ドール駅でブザンソン行き「711」列車を分割しました。ローザンヌ行きは国際特急なので「EC○○」(EC=ユーロ・シティー)という列車番号が与えられています。

 オレンジ・ボディーのTGV-SEはパリ・リヨン駅を出てしばらくすると専用線には入り高速運転になりますが、新幹線のような「ただ今○○km」などという表示がないので正確なスピードはわかりません。しかし、去り行く風景を見ていると確かに「早いな」という気がします。某「のぞみ」号のような揺れもありませんので快適そのもの、また、目障りな防音壁もなく沿線風景が見渡せますが、放牧地の間ばかり走っているので少したつと飽きます。1等車は2+1の3列席で横幅も前後もありよいのですが、「集団見合い」式の固定座席(京急2000系と同じ)のため後ろ向きの座席になる場合もありこれは最悪!! また、中央4人向かい合わせになる座席は足も延ばせずなにとも肩身の狭いシート。

 さて、高速運転になってから少し経つと朝食の車内販売が来ましたがこれは運賃に含まれていません。私は食べませんでしたが30FF(約660円)と聞こえました。内容としてはクロワッサンと小さなフランスパン、バター、ジャムとチーズさらにカフェオレが40cm位のトレーに載せられ,飛行機の機内サービスのようなワゴンで運ばれています。私は駅で買ったサンドイッチを食べました。

 SE線の高速専用線はパリからリヨンまで約450kmあり一番速い列車はノンストップでジャスト2時間、TGVを堪能するならこの手の列車を選ぶべきですが、ローザンヌ行きはパリから40分走ったところで専用線を降りて在来線に入ってしまいました。ここの在来線はパリとフランス東南部を結ぶ幹線で、TGVが出来るまでは特急・急行がガンガンに走った幹線でしたが、今では夜行列車と数本の区間急行が走るローカル線になってしまいました。

在来線を走る TGV
  パリ発車後1時間40分でディジョンに到着です。ディジョンはフランス東部、南部、スイス方面の分岐駅で、私のTGVもブザンソン行きの編成を分割。満席だった車内も半分ほどの乗客が降り静かになりました。
 その後、ローザンヌまでローカル線(一部単線)を3時間近く走ることになりますがさすがは連接車、急カーブも何のその高速でガンガン走ってくれます。
 途中停車駅は5駅でスイス国境のVallorbe駅でフランスとスイスのポリスによるパスポート・チェックが行われ、検札もSNCF(フランス国鉄)とCFF(スイス国鉄)の車掌が別々に回ってきたので、通路の反対側の席で寝ていたおじさんがブーブー言っていた(ような雰囲気)でした。

 パリ発車時には満席だった列車もローザンヌ到着時には3割くらいになり、フランス~スイス間の国際特急としてだけでなくフランス国内の特急としても利用されているようです。

 ローザンヌでチョロっと市内観光をして、CFFのIC(インター・シティ=国内急行)に乗り、ジュネーブへ向かいました。ジュネーブにはトラム(路面電車)がありますが国鉄駅前には乗り入れず、駅から20分ほど歩いた旧市街地を走っています。ここのトラムはヨーロッパで始めての「低床電車」で、その後スイス国内をはじめ、フランス、ドイツにも普及し路面電車復活の立て役者となっています。

 ジュネーブ駅は1番線から8番線までありますが、このうち7番線と8番線はすでにフランス領となっています。と言うのは、ホームの下にスイス、フランス両国のパスポートコントロールがありここでスイス出国とフランス入国の手続きを済ませてしまうからです。しかし、パスポートは出してみたものの中の係員は座っているだけでフリーパスでした。

 ジュネーブからは16時50分発のTGV「EC987」でパリに戻りました。列車はジュネーブを出ると約2時間在来線を走りワインの産地「マコン」から専用線に入ります。ジュネーブ線は乗車率が高いようで全区間2ユニット運転だったにも関わらず、ジュネーブ発車時にはすでに満席に近い状態でした。

乗車区間列車種別
パ リ(7:14発)~ローザンヌ(11:06着)TGV EC21
ローザンヌ(12:28発)~ジュネーブ(13:02着)IC718
ジュネーブ(16:50発)~パリ(20:30着)TGV EC978

A線でナントへ
  日を改め、アトランティック線でフランス西部の町ナント(Nantes)へ出かけました。パリ始発駅6駅の内5駅は昔からの古い駅舎を使っていますが、A線の起点モンパルナスだけは近代的な鉄筋コンクリートです。これは駅周辺の近代化計画で旧来の駅舎が取り壊され、すぐ前のパリでいちばん高い建物「モンパルナス・タワー」と共に建てられたそうですが、コンコースは吹き抜けになっていて大変明るいが、ホームは天井が低いせいか大変暗く、上野駅の13番線ホームにいるような感じです(もっと暗いかも)。指定券売り場はJRみどりの窓口のような明るいオープンカウンターで、窓口では若い女性係員がコンピューターをポンポンと叩いて指定券を発行しています。こちらもユーレイルパス使用なので18FFの追加料金だけで乗れます。

 さてA線は最高スピードが時速300kmで車体の色もSE線のオレンジと異なりメタリック・シルバーにブルーの帯という装いです。A線はパリ・モンパルナス駅を出るとすぐに専用線に入り高速運転に、さすが300kmは「速い」と実感。それに、揺れないし静かですよ。
 A線は途中でツール方面行きを分岐しル・マンの専用線はパリから180km位のところで終わりあとは在来線を走りますが、在来線と言えども時速 200km/hは出すのでこちらの方は多少揺れました。結局、パリ~ナント間 390kmは半分近くが在来線のため2時間かかりますが、ほぼ全線が専用線のパリ~トール間 240kmは1時間で走破しています。

 A線もSE線同様パリ発車時には2ユニット連結ですが、私の乗ったTGV8909列車はナントで分割し、前ユニットだけ目的地に向かい、後ユニットは引き上げ線に入りました、私の見たところA線はSE線に比べ乗車率が低いようです。

 さて、ナントからの帰り4号車に連結している「バー・カー」に行ってみました。バーのメニューはコーヒー、紅茶、コーラ、ビール、サンドイッチといったもので、バーという割にはアルコール類がちょっと少なく、ビュフェと解釈した方がよいかも。私はコーヒーを頼みましたが、某新幹線のコーヒーのようにポットから注ぐのではなく、「カフェ・グレコ」のコーヒーのように挽いた豆の入ったフィルター・カップに1杯づつお湯を注ぎその場でドリップされるので香りも味も大変良いものが飲めます。これで13FF(約280円)ですが、缶コーラ(350ml)の類は10FF(約220円)と割高です。缶コーラもスーパーへ行けば日本と同じく4FF(約100円)くらいで売っていますが、美術館・博物館や駅に設置されている自動販売機ではTGV同様10FFで売られています。

乗車区間列車種別
パ リ(8:50発)~ナント(10:57着)TGV 8809
ナント(13:35発)~パ リ(15:50着)TGV 8834

おわりに
  5月29日、TGV第三段「NORD EUROPE」(NORD=北)が部分開業しました。北ヨーロッパ線と呼ばれるこの線は英仏海峡を経由してロンドンまで行く線と、途中リールで分岐してベルギーの首都ブリュッセルまでの線が建設されています。さらに、オランダの首都アムステルダムやドイツのケルンへの延伸も計画されているそうです。パリ~ブリュッセル間は現在特急で2時間半で飛行機とのシェアを分け合っているようですが、TGVが開通すると1時間半くらいになりTGVの独壇場になりそうです。

旅行期間 1993年4月24日~30日

本HP上のデータは、1993年のものです。

TGVでスイスとナント


大沢 肇 / 東京都台東区
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