BAUNE

ディジョンからの小旅行

ディジョンからボーヌへ
 ブルゴーニュ公の首都であったディジョンを中心とするブルゴーニュ地方は、ワインの宝庫と言われ、ディジョンから南へニュイ・サン・ジョルジュ(Nuits-St-Georges)、ボーヌ(Beaune)からマコン(Macon)とワインの名産地が続いています。また、料理に関しても「フランスの食料庫」と言われるぐらい多くの名物料理があります。新酒(ヌーボー)の出回ったこの時期、時間を掛けて各地を回りボジョレー(Beaujolais)地区までも足をのばしたいところですが、今回はディジョンからほど近いボーヌを訪れることにしました。ボジョレーに行くならそのままリヨン(Lyon)へ抜けるプランが無駄が無く良いと思います。
 ディジョンからボーヌまでは列車で約20分。ディジョン駅でシャロン・シュル・ソーヌ(Chalon-sur-Saone)行きのローカル列車に乗ると車窓右手には黄金の丘と呼ばれるブドウ畑が延々と続いていますが、冬も近いこの時期では収穫の終わった木々と茶色い山肌が見えるだけです。シャロン・シュル・ソーヌへはパリからTGVが直通しており、日帰りでの観光も可能です。 SNCF_dc

ボーヌを歩く
 ボーヌの駅は出札口と待合い室がある小さな駅で、私が乗った列車から降りた乗客は数人でした。帰りの列車の時間を調べているとタクシーの運転手が近づいてきて地図を指さしながら値段を言っています。どうやら黄金の丘と近郊のブドウ畑をまわって 400FFr(約 8,000円)と言うことです。私はボーヌの街をゆっくり見たかったし、実の付いていないブドウの木を見てもしょうがないので、「ノン、メルシー」と言って歩き出すと、背中から「 300だ、 250だ」と段々にディスカウントする声が後を追ってきました。最初の 400とはずいぶんとふっかられたものです。

 駅からAv. du 8 septembreを進むと7~8分で旧市街を囲む城壁の入り口につきます。ボーヌの城壁は東西南北とも約 800mで、その約8割が現存しています。旧市街に入りインフォメーションを訪れ地図をもらい、まず、ボーヌの目玉とも言うべきオテル・デュー(Hotel Dieu)に入りました。オテル・デューとは「市立病院」のことで、1443年に当時のブルゴーニュの大法官であったニコラ・ロラン夫妻によって建てられたものです。内部には創建当時のチャペルがあり、病室や台所なども見ることが出来ます。病室のベッドは第2次世界大戦中には1つのベッドに4人が寝たというもので、今も当時のまま保存されています。出口近くにはオジェ・ヴァイデン作の最後の審判が飾られている小さな美術館があり、暗い部屋の中でスポットに照らされた作品が浮き上がってきます。この部屋には番人はいないのかと思っていましたが、出入口の脇に若いマダム(だと思います)が座っているのが見え、一瞬びっくりしてしまい、こんな所によく座っていられるな、と感心してしまいました。オテル・デューはフランスの建物には似付かない色彩豊かな屋根を持っていて、ボーヌの名物となっています。

 オテル・デューの次にワイン博物館(Musee du vin de Bourgogne)に訪れました。ここは民家を改造したような造りで、受付にはお年を召したマダムが座っており、館内には手作業でワイン作りをしていた頃の道具や、その様子を描いた絵が展示されていました。

名物を食す
 さて、時間もお昼を過ぎお腹も空いたので昼食にすることにしました。ブルゴーニュ地方には名物料理が多々あるそうですが、レストランのムニュ(Menu=定食)にはブーフ・ブルギニオン(Boeuf Bourguignon=牛肉の赤ワイン煮)コク・オ・ヴァン(Coq au Vin=鶏肉の白ワイン煮)などポピュラーなものが多く、ちょっと変わったものを、と考えていた私は街中をうろうろしたあげく、城壁の外を取り巻く環状道路に出ました。すると、アンドュウイエット(Andouillette=臓物ソーセージ)を掲げたレストランがあり、前菜とメインで70FFrと手ごろだったためさっそく入りました。テーブルに着きまずはキール(Kir)。最近これに凝っていて、この白ワインとカシスのカクテルを食前酒としてオーダーしています。前菜に何をオーダーしたか覚えていないのですが、前菜が終わるといよいよメインの登場です。40cm前後の皿の上に25cm、太さ3cmほどのアンドウイエットがのっていて端にナイフを入れると油と汁がジワと出てきました。内容物は豚の内蔵ですので何が旨いか、と聞かれると困ってしまうのですが、まあ、こうゆう料理もあるんだな、ということで旅行の話のネタには十分なお料理でした。機会があればもう一度食べてみたいですが、日本のレストランでオーダーするととてつもない料金だそうで、次回の旅行のお楽しみとしましょう。

ワイン蔵でほろ酔い気分
 午後はカーヴ(cave=ワイン蔵)に訪れることにしました。ボーヌには多くのカーヴがありますが、予めピックアップしておいたカーヴの中から、北側の聖ニコラ門に近いPatriarcheを選びました。ここはワイン蔵と言ってもワイン製造者のワイン蔵ではなく、いわゆるネゴシアン(酒商)の蔵となっています。ネゴシアンはワイン製造業者から樽ごとワインを買い、ビンに詰め自社のラベルを張って出荷する業者です。ここでは入口で40FFrを払い試飲用のカップとリストを貰い蔵に入ります。蔵の中は真っ暗ですがコースに従って裸電球が点いており矢印もあるので迷うことはありません。もちろん実際に使われている蔵なので、コースの両脇にはビン詰めされたワインが天井まで(1m70cm位)積まれていて、ワインを運ぶ小型のフォークリフトも動き回っています。中には1960年なんていうものあり、ほこりだらけになっています。

 コースの所々に試飲所があり、リスト(別表)のワインを好きなだけ飲むことができます。と言っても、わざわざフランスまで来て真っ昼間から大トラを演じても困るので、ほどほどにしておきました。これだけのワインをまとめて飲む機会は今まで無く、ワインそれぞれの味の違いが良く分かりました。また、試飲所にはカゴが置いてあり、気に入ったワインをカゴに取り、出口で購入する仕組みになっています。

BOURGOGNES BLANCS(白)BOURGOGNES ROUGES(赤)
BOURGOGNE CHARDONNAY, 1989CHATEAU DE MARSANNAY, 1990
CHABLIS, 1989MERCUREY, 1988
SAINT-ROMAIN, 1985GEVREY-CHAMBERTIN, 1989
白は3種類でしたHAUTES COTES DE BEAUNE, 1993
SAVIGNY-LES-BEAUNE 1ER CRU,1992
NUITS-SAINT-GEORGES, Les Pruliers, 1982
Hospices de Beaune, VOLNAY,Cuvee General Muteau,1989
CHOREY-LES-BEAUNE. 1984
RICHEBOURG, Grand Cru, 1978
VOLNAY, 1982

テイスティング・リスト

 さて、蔵を出るとすでに時計の針は3時を過ぎ、日も傾いてきたようです。
駅に急ぎ3時32分発の列車に乗ろうとするとそれはパリ行きのTGVで、乗車券のほかに18FFr必要とのことです。急ぐわけでもなかったので、その後の48分の普通列車に乗りディジョンに戻りました。

 ディジョンからボーヌへは鉄道のほかバスもあり、黄金の丘のワイン街道を走りますが、便数が少ないので注意が必要です。

まだまだワイン
 ディジョンに戻った後、ホテル近くの酒店でシャブリのプルミエ・クリュを買い込みました。これは最高級のグラン・クリュに次ぐクラスで、日本だとかなりのお値段のようですが、1本 2,000円以下と地元ならではの価格でした。あまりに安いのでもう2~3本買おうかなとも思いましたが、ユーロスターで英国へ渡る予定もあり1本だけにしておきました。しかし、その1本も一緒に買ったチーズをつまみにその夜のうちに飲んでしまいました。大変に上品な味で「もっと買っておけば」と思った一本でした。


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