アジアを旅する 3

和田 周のソウル乗り歩き

和田 周の

ソウル乗り歩き

和田 周のソウル乗り歩き

 1998年12月、韓国のソウルに行ってきました。市内の乗り物を一通り乗ってきましたので、レポートします。果たして、そこで見たものは?

地 下 鉄
 市内には地下鉄が1号線から5号線までと、7号線、8号線の一部が通っています。各線は色分けされていて、比較的利用しやすいようになっています。
 1号線から4号線まではソウル地下鉄公社線、5号線から8号線まではソウル都市鉄道公社線となっていますが、利用時は両者の違いはありません。
 ところで「比較的」利用しやすいとしましたが、日本のガイドブックなどに乗っている路線図は、駅名が漢字とその読み仮名が振ってあるものが一般的ですが、実際に駅に行ってみるとほとんどハングル文字しかなく、解読するのに閉口します。特に列車の行き先には十分注意が必要です。4号線以外は日本と列車の進行方向が逆となります。但し、各駅には駅番号が通しで振ってあるので、この点は、大変便利です。
 また、7号線と8号線は郊外区間のみの開通、また6号線は全線工事中ですが既に路線図に記載されており、パッと見では既に開通しているものと間違ってしまいがちです。
 また2号線は環状線です(一部支線もあります)が、合井Hapchongと堂山Tangsankのあいだにかかる漢江の鉄橋に危険個所が発見され、現在この区間が改修工事中となっており、代行バスが運行されています。

 車両ですが、VVVF車がかなりの割合で走っています。特に金浦空港に通じている5号線は、比較的最近開通したこともあり、全車VVVF車のようでした。現代精工社製で、自国で製造していますが技術は日本の東急などが供与しているようです。顔は、西武の6000と半蔵門の8000(5号線はラインカラーが紫)を足して2で割ったような感じです。
 おおむね各線10両編成4ドア車で大変近代的な印象です。在来車にも車内にLEDの表示板が車両中央に枕木方向についており、情報をスクロールで流していました。ソウルの「中吊り広告」は日本のそれと比較して、おおよそ上下が半分の長さなので、天井が高く感じられ快適です。ただ、広告数が少ないように感じられたのは、経済危機の影響もあるようです。
 また、車体の幅が日本車よりも20センチくらい幅広のようです。線路幅も大きいのですが余計にゆったりとした車内のように感じられました。新車でも旧車でも、窓が上半分を手前のほうに傾けて空けるスタイルで、外観は昔の「バス窓」のようです。
 一部区間では、韓国国鉄KORAILと相互乗り入れをしていますが、電気方式が違うからでしょうか一部にはデッドセクション区間が設けられていました。走行中に惰性で走っていきなり暗くなるので、知らないで乗っているとびっくりです。多分パンタグラフや碍子の様子から想像して交直流両用車なのでしょう。
 ちなみに初乗りは 450ウォン(約45円)からで、安価です。治安もよく早朝から深夜まで運行されているので、大変便利です。

 日本にはないものに、「車内販売」があります。といってもお茶や弁当ではなく、おじさんが走行中車内中央で、やおら大声を出して手にしている「商品」の説明を始めます。ハングルは分かりませんが、おおよそ「この私の持っている手袋はとても暖かく、、、一万ウォン(約 1,000円)の所、今日は特別五千ウォン(約500円)だ!」とやります。
 後は商品を手にして座っている乗客を回ります。一通り回ると、次の車両へ移動して、また商売です。
 お菓子などを売りにすることもあります。この場合、手に持っているお菓子を座っている人のひざの上においていくことがあります。要らなければそのままにしておきますが、いきなり目の前に置かれるとびっくりです。
 私の見た限り、お菓子や手袋の他、新聞、雑誌、携帯ルーペ、おもちゃなどがありました。凄いのは、駅のホームや改札周辺でもやっています。どこでもお構いなしですが、やはり経済危機の後にはこの「物売り」が増えたということです。

バ  ス
 ソウルと言えば、バスに乗らない手はないです。前から噂は聞いていましたが、一部には「世界一飛ばす」といわれているソウルのバスは、是非一度体験すべきでしょう。
 地下鉄以上に市内に路線が張り巡らされています。その数700以上。すべて通しの系統番号が振ってあります。
 金浦空港から市内中心部の主なホテルに行く路線としては、600番と601番があります。一応エアポートバスということで前扉のみのバスですが、それでも物凄く飛ばします。
 車内ではAMラジオがガンガンにかかっており、停留所放送はバラバラ、乗客はひたすら座席にしがみついています。韓国は道路が大変に広く片側4~5車線は当たり前です(緊急時には滑走路として使うため)が、右に左に車線変更しトロい車には容赦ないクラクションの雨を浴びせます。
 降りる時は、車窓から判断して近くなったら降車ボタンを押しますが、押さない人も結構います。手すりにつかまりながら扉までやってきて、一番前の座席付近で待機しています。そして、ドアを開けた所がバス停です。ちなみに私の場合は、路肩から3車線くらい中央寄りで降ろされ、車の間を縫って歩道に上がりましたが、轢かれるかと思いました。
 乗る時はもっと凄いです。繁華街などになるとバス停も林立し、大変込み合っていますが、やって来るバスが半端な数ではなく、それを待つ客達は車道にまで出てお目当てのバスを待ち構えます。
 そして、バスが来てもバス停に止まらず、えらく離れて適当な所でドアを開けるので、乗客は車道をダッシュして(!)乗降口に駆け寄っていきます。まるでバブルの時のタクシー争奪競争に近い感じです。
 ソウル在住の友人は、「ソウルのバスは交通機関ではなく、アトラクションです」と言っていたが、まさにその通り。ただし、車酔いしやすい人は、避けたほうがいいかも。
 車はDAEWOO(大宇)製とHYUNDAI(現代)製のバスが多かったようです。
 前者は富士重工のバスとそっくりで後者は三菱ふそうのバスに似ています。現代と三菱は業務提携を結んでいるとかで、デボネアやパジェロが現代ブランドで走っている姿を至る所で見かけました。ちなみに、日本車はほとんど目にすることが出来ません(一度だけ10年くらい前の古いクラウンを見ただけでした)。基本的に日本車を締め出しているためです。でも、市中の車を見ていると結構日本車のコピーっぽい車が走っているようでした。

タ ク シ ー
 まず、大きく分けて2種類あります。市中を走っているほとんどは、銀色の車体に黄色い行灯のタクシーです。もう一つが、黒塗りのやや大き目のタクシーで模範タクシーと呼ばれています。これは主に空港やホテルなどで目にすることが出来ます。
 一般のタクシーは、日本でいう所のコロナ・ブルーバードクラスの車を使用しています。東京と同じように至る所に沢山走っているのですぐ捕まえることが出来ます。
 基本料金は、2kmまで1300ウォン(約 130円)、以降 381mごとに 100ウォン(10円)という安さで、とても気軽に利用できるものです。深夜料金は20%増です。
 日本と同じように電子制御のメーター機がついているので、メチャクチャぼったくられるような心配はありませんが、道は分からないので(特にソウル市内はロータリーが多い)結構ドライブされてしまうかも。
 流しを捕まえるには、とにかく来たタクシーを、実車であろうと手を挙げてしまうことです。ここでは相乗りが当たり前なのです。行き先を言って、同方向でしたら乗せてくれます。
 空車の場合、乗客は自分で「助手席」のドアを開けて乗り込みます(後部座席には、あまり一人では乗らない)。日本では前の座席に乗せるのは後部座席がいっぱいの時だけで、前だけに乗せるとタクシー強盗と間違われてしまうのですが、国民性の違いでしょうか。
 車内は日本のように奇麗なシートカバーはしてありませんが至って普通です。
 ただし、飛ばします。それでもバスほどではありません。ソウルでは、一番えらいのはバス、次にタクシー、一般車はその後だそうです。さらに歩行者はその後で、前述のように車線が広いため、歩いて反対車線側になかなか行くことが出来ません。地下道や地下街が発達してますが、結構迷います。モータリゼーションの発達が急すぎて、歩行者保護や運転マナーがついていってないようです。交通事故もとても多いと聞きました。

航 空 機
 日本-ソウル間は日本航空、日本エアシステム、大韓航空、アシアナ航空、ノースウエスト航空、ユナイテッド航空の6社が運行されています。私は大韓で行きましたが、最近人気が高いのはアシアナだそうです。
 ご存知のように、大韓は最近事故が多くやや敬遠されているようです。アシアナは就航してから未だ10年足らずですが、サービスの良さなどで、韓国内でも人気急上昇ということです。次回は乗ってみたいですね。。
 時期にもよりますが、往復航空券だけなら2万円台前半からあります。おおよそ、行きに3時間、帰りは偏西風に乗って1時間半といった所でしょう。とても近いです。

 韓国はキムチの国だけあって、辛い食べ物が多いですが、石焼きビビンバや韓国焼肉は大変美味です。諸物価も安いので、気軽に行ける海外でしょう。  ハングルは、結局今回一つも分かりませんでしたが、日本語のように「表意文字」ではなく「表音文字」なのでとりあえず母音と子音をパズルのように組み合わせれば、比較的短期間に読むことは出来るようになるということです。
 次回訪問時までに、何とか読めるようになれば、と思ってます。それもこれもソウル競馬の競馬新聞を読みたいが為なんですけどね(笑)。でも、読めなくても勝って帰ってきたのは、ただ者ではない?!

和田 周 / 東京都調布市

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