模型工作リターン<3>
東武特急

100系「スペーシア」

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 はじめに
 この度は「モデルローレル賞」をいただきありがとうございました。紙上をお借りして皆様に御礼させていただきます。
昨年の鉄道友の会 ブルーリボン賞に輝いた、東武鉄道特急「スペーシア」は、浅草を起点に日光・鬼怒川へと走っています。私の地元浅草に関係した車両が授賞したのは営団地下鉄銀座線01系のローレル賞以来です。当社でもそんな車両を放っておくわけにはいきません。交博運転会も考慮しさっそく一編成製作しました。

 作 図 
 車体図面は当初「鉄道ファン」1990年8月号の折り込み形式図と「Rail Magazine」の縮小図面を使い、ほかに各紙の写真を参考としました。製作開始時にはまだ実車を見ていなかったので、一部実車と異なる部分もある様です。

 ボディの製作
 工作のポイントは何と言っても特徴のある先頭部です。また、各車両とも側板が屋根の肩部まであり雨樋を兼ねていてここも工作の要点となりますが、前作のJR東日本のキハ110系の経験が役立ちました。
 さて、先頭部ですがこれは一昨年のMBL賞をいただいた「スーパーひたち」と同じくプラキャストによる成形としました。プラキャストによる成形は運転台より下の部分のみとし、趣味誌の図面や実車写真を元に木片とペーパーで型を造ります。次にこれを枠で囲み整形用シリコンゴムを流し込む雄型を造ります。雄型は一昼夜置き完全に硬化したところで中の型を取り出します。
 次に雄型にプラキャストを流し込みます。プラキャストは2液を混合し硬化させますが、混合には富士フイルムのポリエチレン製フィルムケースを使っています。富士のものは半透明で分量がわかりやすく、混合液を造りすぎるなど無駄を押さえられます。
また、残った樹脂は硬化後容器を手で握ると簡単に取り出すことが出来ます。

 ボディー本体ですが、外板に0.3tのアイボリーケント紙を用いました。(以下0.3t、0.5tはそれぞれアイボリーケント紙を示します)また、補強として裏側に0.5tを紙の目が外板と直交するように切り出し接着しました。紙の目を直交させることによりかなり頑丈なものになります。
 さらに、3×3mmの角材を裏側に接着しボディの直線性と強度を保たせました。この際、接着する部分を5mm厚の板に事務用ダブルクリップで止めボディの直線性を保つようにしました。
ケント紙や角材の接着には「木工ボンド」(ビニル樹脂エマルジョン系)を使いました。

 ここでパテを使いボディと屋根の継ぎ目やキズを埋め、乾いたところで中目のサンドペーパーをかけます。当社では「TAMIYA PATTY」を使っていますが、これは乾燥したときのパテが肉やせし埋めたはずのキズが目立つようになるので、キズの大きなところではパテを山盛りにして2~3日かけ乾燥させます。
 この車両を造ったのは昨年の8~10月で毎日のように雨が降りなかなか乾燥しないという日が続きました。

 下塗り 
 ここで下塗りに入ります。方法は従来どおり「TAMIYA PATTY」を溶かしたものを筆塗りします。
筆塗り→乾燥→研磨の作業をボディ表面が平滑になるまで繰り返します。(通常4~5回くらい)研磨には 260番前後の木工用サンドペーパーを使っています。

 塗 装
  ベースのホワイトはGM鉄道カラー37番「国鉄 白3号」のスプレーを吹き、ラインは同カラー31番「朱色3号」、26番「近鉄マルーン」を、窓周りは10番「黒色」(ともにビン入り)を筆塗りしました。
 マスキングにはセロテープを使っていますが、粘着力が強いので塗装後にテープを剥がす際には注意が必要です。

 屋上パーツ
 クーラーは0.5tのペーパーと3×3mm角材で作り、強度を持たせるためボディ先頭部に使用したポリパテを流しました。
ポリパテもあまり大量に流すと乾燥後に反ることがあるので、1mm位の厚さに流すのがコツの様です。
 パンタグラフは形態的にほぼ同じカツミのPT-48を使いました。某社のアーバンライナーの様に6両編成で6個も搭載すると言うこともなく、@1,450円×3個で4,480円(税込み)の出費でした。

 小物パーツ
 先頭車乗務員ハシゴはいさみやのものを使いました。
 連結ホロは当社で従来から採用しているカラーペーパー(グレー)を折り重ねたものを使いました。

 台車&動力装置
 台車は日光モデルのFS-369を使いましたが、同製品はピヴォット軸が無いので非動力車には「モワ」製の軸受けメタルを入れて転がりを良くしています。
 動力は4号車にエンドウのトラクションモーターを2台搭載しました。6両編成で2モーターではどうかと思いましたが、軸受けメタルを入れたため大変よく走ります。ただし、走行負荷は大きいので長時間走行ではトラクションモーターにトラブルが発生する心配があります。
 床板は動力車のみプリント基板用エポキシ板を使用しましたが、他の車両は3mm厚木板切り出しました。
動力車床板にはカツミ製の棒状ウエイトをネジ止めし、黒色塗装しカモフラージュしています。トラクションモーターと床下ウエイトにより動力車にも内装が出来ました。

 床下機器
 床下機器は動力車にカツミ201系(鋳物)を、ほかの車両には軽量化のためカツミのプラ製のものを取り付けました。
ドローバーはカワイ製のものを使いました。

 内 装
 1号車以外はシートのみの設置で、カツミのシングルクロスシート(赤)を使いました。
1号車の個室はアリイの「イージーキット・シリーズ オハネ25」のプラ製室内装備を窓ピッチに合わせ切断、塗装の上使用しました。また、ペーパーから大型テーブル(実物は大理石)を切り出し、塗装し窓際に取り付けました。
 窓ガラスは「カードケース」の透明塩化ビニール板を使用し、「セメダインハイコンタクト」で接着しました。

東武特急 100系「スペーシア」
 終わりに 
 ボディが出来かかったところで自宅改築のため引っ越しとなってしまいました。
パーツをどこに入れたかわからなくなり、あちこちと引っかき回すのに時間が取られてしまいました。いまだに行方知らずのものもあります。転居を予定されている方はご注意を

東武特急 100系「スペーシア」

ダイソー
・木工用ボンド(水性/酢酸ビニル樹脂系)
・瞬間接着剤(多目的タイプ 強力瞬間)
・カードケース
・ボンドG17
(クロロプレンゴム系溶剤形接着剤)コニシ
東急ハンズ
・3×3mm角材、床板(アガチス)
秋月電子通商
・白色LED
・ブリッジダイオード
・コンデンサ 
使用材料(購入店)

 その後・・・
 トラクションモーターでデビューした当社のスペーシアですが、特急車としての走りに満足出来ず、また運転会での運転に不安があったため、2000年ころDV-18系モーター+インサイドギア方式に変更しました。 メンテに手は掛かりますが特急車両らしい快走が楽しめます。

 出  典
 この製作記は、鉄道友の会東京支部模型部会の例会誌「モデルマニア」1991年2月号掲載記事の原稿をフロッピィ・ディスクから取り出し構成しました。
= 2016.03.12 =


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