鉄道模型工作シリーズ 4
振り子試験車
591系電車
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■製作に至るまで
 20世紀も終わりに近づいた平成12年12月、関水金属(KATO)より振子式電車885系かもめセット(Nゲージ)が発売されました。この模型には曲線区間で車体を傾斜させる曲線車体傾斜装置が取り付けられており、曲線を走らせると見事に車体を傾斜させて走ります。
 当社でもさっそく885系を製作し、この装置を取り付けようと思いましたが、振子装置は20年程前から何回かトライしているものの実用化に至っておらず、885系を製作しても腰を振り~振り~走ってくれる保証も有りません。(885系がまともに完成するかの方が問題ですが

 そこで、仕掛中であった591系振子試験車に旧来案の傾斜装置を取り付け走行させたところ、時々脱線があるものの車体を傾斜させながら走ってくれましたのでこの傾斜装置を正式採用することにして、591系電車の製作を開始しました。

■上回り
  ボディはとれいん誌 昭和61年11月号掲載の図面を参考に、ペーパーボディと木製屋根というオーソドックスな方法で製作しました。
 高運転台部はペーパーを瞬間接着剤で固めながら組み上げています。ボディそのものは1992年頃製作したもので、先頭部の帯塗りに失敗したためお蔵入りとなっていました。
 今年は「20世紀の宿題を片付ける」というテーマで、仕掛になったものを1両でも多く完成させようと目論んでおり、このクモハ591系はそのテーマの第1号となりました。

■傾斜機構
   模型車両の車体傾斜実験は17~8年前からやっていて、最初は台車に支柱を立て床下機器を重くし実車同様にカーブで自然に傾斜をさせようとしましたが、遠心力で一般車より脱線しやっすかったり、モーターの取付方法など問題が解決できずにこの方式は辞めました。

 次に考えたのは、カーブで台車が回転すると台車に取り付けた突起が車体を持ち上げる方法でしたが、カーブでの脱線が多くこれも採用できませんでした。
 この方式は当時製品化されていてそれを真似したのですが、製品の方もいつしか無くなってしまって・・・。

 今回はカーブで台車が回転したときスムースに車体を持ち上げられるように、不要になったボールペンの柄を縦割りにした半円形のパーツを台車側に取り付け、ボディ側のマウントを持ち上げるようにしました。また、床下機器をペーパー製にして車体重量を軽くし、車体が無理なく傾斜できるように工夫しました。

振り子試作車591系の製作
台車に取り付けた傾斜装置

振り子試作車591系の製作
台車が回りマウントに乗り上げたところ

■下回り
 591系は試験車ゆえ、台車は独特な形をしていて適当なものが見当たりませんでしたので、381系振子電車用の 日光モデル製 DT-42 を用いました。
 動力は高速性を考え、DV-18系モーターとインサイドギア方式で計画していましたが、車体傾斜の際モーターが補強材に当たるため、MPギアを使った床下伝動方式に変更しました。

 MPギアはエンドウ製「車輪付きMPギア 電車用D(品番:#6213)」を、モーターは手持ちの円筒形のものを使いました。MPギアセットには2台車分のギアが入っていますが、車体が軽いので1台車駆動とし、モーターは以前に購入した「しなのマイクロ」のキットに入っていた円筒形の「しなのマイクロ純正品」を使用しました。

 モーター・MPギアを床板に取り付け室内にエンドレスを敷き走行性を見ていたところ、4~5分で段々とスピードが落ちてしまいました。どうやら購入後20数年経過しているため性能が劣化してしまったようです。グリス処理をしたりしましたが性能が戻らないため、このモーターを諦め、以前に秋葉原の秋月電子で100円で売られていた12V対応のと交換しました。

 2月の「関東合運」(RM Models 2001年5月号などをご覧下さい)の運転会場では、周回レイアウトを快調に走り、モーターに関しては今のところ問題ない様です。
 ウエイトはパワトラ車用に自作した床下に吊るものを流用しました。これは紙粘土で8mm×12mm×30mmの型を作り、溶かした鉛を流し込んで作ったもので、最近製作した叡電710形や800形にも使用しています。
 床下をモーターと推進軸が占拠したためウエイトが小型になってしまいましたが、4%の勾配のあるレイアウトも難なく登ります。

 その後、天賞堂製 軸距離 27.5mmのパワートラックが入手出来たため動力装置の総取り替えをしました。高速性は失われましたが、カーブでの脱線も見られず、車体を傾けながら快調に走行しています。

振り子試作車591系の製作

■パーツ
 ボディ塗装後、乗務員ドアの横にφ0.4mm洋白線(KSモデル)でハンドレールを、高運転台車にエンドウ製 特急マーク(大)、低運転台車に同(小)、屋根上に信号煙管を取り付けました。
 パンタグラフは下枠交差型が2基載っていて、1基は通常型ですがクモハのものはカーブでの車体傾斜に合わせパンタが左右に移動する装置が付いています。これも模型化したいところですが、複雑な形態をしていて模型化を諦めエンドウ製PS-22を載せてあります。
 中間車の屋根上には交流ガイシと母線が通っており、これはエンドウ製交流用7段ガイシφ0.5mm洋白線(KSモデル)で表現しました。591系は重心を低くするため交直両用車にもかかわらず、屋根上はさっぱりしています。

 ヘッド/テールライトは、黄色 ならびに 赤色LEDで点灯させています。また、室内には白色LEDによる室内灯も付けました。シートは、カツミ製シングルシートを取り付けましたが、数えてみると定員 120名分の座席が確保されたことになります。
 先頭車ヘッドマーク ならびに 中間車サボはパソコンソフト一太郎で製作、PM紙に印字・切断し所定の位置に貼りました。

振り子試作車591系の製作

= 2001年製作 =


=後記=
 Wikipedia を見ると、「車体長は両端の先頭車が14,150mm、中間車が10,500mm、全長は44,900mmであった」と記載されているが、14,150×2+10,500 を計算すると38,99%mmになり 6,100mm余る。まさか連結面が3,050mmずつであるわけはない(えらく長~い幌だ!! )。
実際は、「先頭車が16,600mm、中間車が10,000mm、連結面500mm、先頭車カプラー350mm」で、全長44,900mmとなる。
= 2012.01.30 =

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