鉄道模型工作シリーズ 11
常 磐 線
657系特急電車
 常磐線では、平成元年(1989年)から走り始めた651系「スーパーひたち」と平成12年(2000年)からの「フレッシュひたち」が特急電車として活躍していたが、「常磐線特急電車のさらなるサービス向上を目指し」、新型電車E657系特急電車が投入された。
 「JR化後、JRの車は作らない」とか、京成電鉄 AE車製作以降「長編成は作らない!! 」などと言っていましたが、地元台東区である上野駅を発着する車両を放って置くわけには行きません。意を決し E657系特急電車10両編成 を製作した。

E657系特急電車

■ケガキ
 この車両は車体断面が旧来のそれと異なり、昔の66系電車の様に台枠が垂直に成るなど作り難い形状ではあるが、E259系N'EXと同じなのでその時の経験が生かせた。
 車両寸法は、鉄道ファン2011年9月号(通巻 605号)の図面を参考として模型化寸法を算出、最近のファン誌の図面は小さくて・・・。
 ボディ側板、屋根、補強材ともに 0.5t 方眼紙 を用い(以下、特に記載のない限り方眼紙は 0.5t)に直接ケガく。この電車は、客窓が連続窓風にデザインされているので、長野電鉄1100形(E253系「N'EX」)や小田急VSE同様、ボディ側板と窓枠を別にし貼り付ける様にした。
 窓・ドア配置が同じ車両はまとめてケガキが出来るが、この列車は車両ごとに微妙に異なるため、まとめてケガキが出来ず少々時間が掛かってしまった。。
 妻板は、設計図を元に2枚貼り合わせをした0.5tにケガキ、切り抜く。この妻板が組み立ての際にガイドとなるので、ケガキ、切り抜きともに慎重に行いたい。たとえば、妻板の幅が1mm広いと1mm幅広の車体となってしまうので、私の工作上ポイントとなる部分だ。

■側板加工
 ケガいた側板から客窓、客扉、方向幕窓を切り抜き、客室部分の肩に裏から切り込みを入れ内側に曲げる。腰部のRは丸いボールペンに巻き付ける様に内側に曲げクセを付け、裾部は薄く切れ目を入れ折り曲げる。別にケガいたドア材も所定のサイズに切り抜いてから、曲げ癖を付けておく。
 切り抜いた側板全体と窓・扉の切り口にうすく溶いたGMビン入りクリアコート(No.44・半光沢・表面保護)を染み込ませる様に塗り、窓・扉は細かいサンドペーパーを掛け切り抜いた際のめくれが無い様にする。
 ボディ材料が揃ったところで、ボディにドア材、窓枠、補強材、ボディ下部の帯板を木工用ボンドで貼り、また、肩部分に5mm幅を 0.5t方眼紙を切り出し裏側より補強として貼り付ける。先頭車には、別に切り出した乗務員扉をボディとツライチになる様に貼り付けた。

E657系特急電車
[上] 窓枠・ドアを貼り合わせたところ
[下] 貼り合わせ前

 ボンドが乾いたところで、ボディ裏側に3×3mm角材を所定の位置(ボディ下部から1mmと肩部)に接着した。
 妻板は、車体断面のR形状に気をつけながら切り抜き、強度を考え2枚重ねとする。
 屋根は方眼紙を2枚重ね、補強として中央に3mm角材を直線を保つ様に接着する。
 組み立てに入る前に、作業中の方眼紙の硬化促進と切り口のめくれを防止するためボディ板全体に、溶剤で薄めたクリアコートを筆塗りするが、1回目は方眼紙に良く染み込むようにかなり薄く、2度目はそれより少し若干濃く、と変化を付けて塗る。

■組み立て
 まず側板と妻板を木工用ボンドで仮止めし箱状にして、四隅の直角とボディ全体の歪みを補正して側板、妻板、屋根板などの接続部分に瞬間接着剤を流し固定する。
最近では瞬間接着剤も種類が多くなり「ねっとり~」したものから「サラサラ」なものまであり、ここではサラサラな接着材を用い、接着するとともにペーパーに良く浸み込む様にする。

  E657系
妻面組み立て

 さて、車両で一番難しいのは何と言っても先頭部
 E657系特急電車も最近のJR車両特有の曲線を持っているので図面と画像を精査した。
 車体裾の3mm角材は先頭部分をあらかじめ図面通りに湾曲させておき、ボディ側板と接着。中のスペーサーも図面を元に切り出しておくが、完成後取り出すことはしないので、ライト取り付け作業などがし易い様に中央部に穴を開けておいた。

E657系

 ボンドが乾いたら、側面から続く肩部分の延長を切り出しボディに接着する。
 次に運転室となる部分にもスペーサーを入れるが、スペーサーが水平になることに注意し取り付けた。このスペーサーも完成後には取り出さず、運転台として利用するので、運転台部分には切り込みを入れておいた。
 さらに、先頭部中央の部材を切り出し所定の位置に接着。これはヘッド/テールライトの位置・形状とも関わってくるので、数回のカットアンドトライを経て何とか落着。
 ここで先頭部にパテを塗り、完成後にサンドペーパーを掛け、先頭部中段以下の出来映えを確認した。

E657系特急電車
先頭部組み立て(2)

 先頭部最後の工程は屋根の製作。
 まず運転台後部の「砲弾型」となる部材を切り抜き、図面を確認しながら接着。
 次に屋根部材を切り出しますが、中央後部の信号煙管部分を切り抜いておくが、この部材は屋根Rの表現と後部方向への緩い2種類の湾曲加工が必要だ。中央の切り抜き部分に注意をしながら指でゆっくりと曲げて曲げ癖を付ける。
 上から見ることの多い模型ではこの部分の出来が重要なので、納得が行くまで何度か作り直した。

E657系特急電車
先頭部組み立て(3)

 最後は運転台の窓枠工作。
 さすがに先頭部を下から組み立てていくと、上に行くに従って狂いが出て来るのはいつもの話。1~2ミリの誤差だが、工作物自体が小さいので2ミリも狂うと全体のバランスに影響を及ぼし、「何か違うな!」という印象になるので、周囲のバランスを考えながら慎重に窓枠を接着して行く。
 最後に前面スカートを取り付け、パテを塗り、数日後サンドペーパーをかけてみまたが、そんなに悪くないゾ 何とかモノなりそうな先頭部が出来た。

E657系特急電車
先頭部組み立て(4)

■ボディ表面加工
 先頭車の工作にずいぶんと時間が掛かってしまったが、中間車は特にコレと言ったこともなく、ハイスピードで組み上がった。(が、8両は大変だ~!)。
 ボディ組み立てが終わったら、全体にクリアコートを塗り乾燥後にサンドペーパーを掛け表面を平滑にする。表面に凹凸が残る様ならクリアコート → サンドペーパーを繰り返す。
 ボディ表面が有る程度平滑になったら再度クリアコートを塗り、サンドペーパーを細かい500番程度に変え平滑になるまで繰り返す。
 表面が平滑になった(と思ったら)、サフェーサーを吹き付け表面の具合を観察するが、ボディに凹凸やキズが見られる様ならサンドペーパー~サフェーサーを繰り返えす。
 表面が平滑になり塗装可能な状態になったところで、付属パーツをいくつか取り付ける。

 妻面には貫通路ホロのほかに「転落防止ホロ」が設けられているが、実物大のものではカーブで脱線してしまうので、0.5tを2枚重ねにし、1mm幅にカットしたものを妻板に接着し転落防止ホロもどきのものを取り付けた。
 今回もこれを踏襲し同じ仕様のもの車端部に取り付け、さらに、図面と画像から気が付いた2点の車端部アイテムを取り付けた。

E657系特急電車

■塗 装
 車体色は、白をベースとしているが見る角度によっては赤っぽさが浮き出てくる。Webなどで作例を見ると、白塗装の前に赤をを吹いていたりしているので、私もこのアイディアを採用し、まずGM No.27 西武レッドを全体に吹いた。見た目には名鉄だがすぐにホワイトを塗装してしまうため大変短い期間の姿だった。
 次にGSIクレオスの No.69 グランプリホワイト を吹き、客窓と先頭部運転台回りはNo.10 黒 , 窓下のラインはNo.38赤14号、ボディ裾周りのピンク系色は、白と赤で調色したものを筆塗りした。

E657系特急電車
ほとんど名鉄車みたいな
■屋上機器
 E657系特急電車の屋根上は大変すっきりしていて、クーラーのほかには中間車はFM/AM受信アンテナWIMAXアンテナが、先頭車にはこれに防護無線アンテナが付く程度だ。
 FM/AM受信アンテナ はサイズの少し違うペーパーを2枚重ねにして、別作りの台に載せ白色に塗装、所定の場所に接着。まあ何とかそれらしくは見える・・・かな。E253系の様に屋根にリブが無いのは製作者にとっては大助かりだゾ。

E657系特急電車

 パンタ周りですが、ここはエンドウさんの「交直流機器セット」の力を借りようと思いましたが、時代の流れでしょうか、載っている機器がかなり違います・・・使えな~い。そこで、上野駅北側の跨線橋 両大師橋 から上野駅に発着するE657系電車のパンタ周りを撮影し、これを参考にペーパー、角材、ワッシャーなどで製作した。ガイシなどに不満は残りるが、模型としては上出来だ!! と思うことにする。

E657系特急電車

 クーラーはパーツが無かったのでペーパーと3×3mm角材で自作した。
中央の網の部分はパソコンで描き、所定のサイズに切り抜き貼り付けた。

E657系特急電車

■下回り
 台車は、カツミの WDT-56 が近い形状なのでピヴォットを7セット、プレーンを3セット購入。
 前作 E259系は細身モーターのLN-14(高速/両軸)+MPギア 1モーターで6両編成が快調に走行している。これはペーパー製で車体が軽い上に、動力車の荷物置き場にウエイトを登載でき走行に必要な粘着力が確保出来たためだ。E657系は10両編成なので LN-14+MP 2組で走行させようと思ったが、客席が広くウエイトを搭載するスペースがほとんど無く、これではウエイト不足で平地でも空転してしまう。

E657系特急電車

 そこで、製作中の長野電鉄1100系(元JR253系)で採用したCN-16(片軸/強力型)+MPを使用することにした。1100系は、テスト走行で1M2Tでも余裕があるので10両で3Mとして、パンタなしのモハE656形3両に搭載。ウエイトはトイレ・洗面所部分のほか、床下に搭載した。
 床下のモーターとMPギアを繋ぐユニバーサルジョイント部に小さいながらウエイトを詰め込める場所があるが、形状が三角形のためウエイトを加工しなければ成らず長電1100系では空けていた。しかしながら、今回はウエイト不足が予想されるためここに詰め込むウエイトを鉛で成型してボンドで貼り付けた。
 画像左端はトイレタンク。これもペーパーからの作成だ!!

■床 下
 車両連結部にはE259系同様ヨーダンパがある。E259系製作の時には何種類か試作したが、今回はその時のものを流用した。ドローバーの形状をH型にして1mm径ビニル被覆線を利用したジャンパー線と一緒に取り付けたもので、実車のヨーダンパと比べると動きが異なるが、模型としては十分ではないだろうか。

E657系特急電車

 このところ、小田急VSE、京成AE車と床下を覆うスカートの付いた車両を作っていた訳ではないが、床下機器を作るのを忘れていた!!
 E657系の床下機器類は製品として出ていないので、車両図面と車両側面写真を参考にペーパーと丸棒で作成した。

E657系特急電車

■ライト類
 ヘッドライトは3mm径白色LEDを2段重ねにして計4個を床に載せ、テールライトはチップ赤色LEDを運転台屋根裏に張り付けた。この場所は非常に作業のし難い場所で、前々作「京成AE車」では割愛したが、今回はガンバッて取り付けてみた。また、後部運転台の照明として5mm白色LEDを運転台に置いた。テールライトの光が漏れて効果がイマイチなのが残念
 室内灯は、ブリッジダイオードで整流、LEDは1両につき5~6個並べ、1.5kΩの抵抗で減流している。

E657系特急電車

■その他
 座席は、カツミのシングルクロスシート(オレンジ)に白い紙片(3mm×3mm)を座席ごとに張り、シートカバーを表現。1シートに2枚づつ貼っていくと数も多く、肩こり、腰痛が頻発 この商品は、夏頃 150円(税抜き)から 300円(同)に値上がりしたんだヨ。
 幌は従来どおりカラー・ペーパーを十字に折り重ね、四隅をカットしたものを取り付け。
 前面ガラスは「ポカリスエット(500ml)」の曲面部分を利用、客窓ガラスは、「カードケース(ハード)」を所定のサイズに切り、いずれもゴム系接着剤で固定した。
 乗務員室脇の手すりは、0.4mm洋白丸線を所定に位置に取り付け、瞬間接着剤を極少量流し固定した。

以上簡単ですが、E657系特急電車電車の製作記事を掲載しました。

ダイソー
木工用ボンド(水性/酢酸ビニル樹脂系)
瞬間接着剤(多目的タイプ 強力瞬間 5g)
カードケース
ボンドG17(クロロプレンゴム系溶剤形接着剤)
3×3mm角材、床板(アガチス)
秋月電子
白色LED、ブリッジダイオード、コンデンサ 
アサクサモケイ
車体製作ペーパー(0.3t / 0.5t)
使用材料

Back gif


Copylight(C)2010,H.Osawa,All RightsReserved